認知症の方の不動産売却に必須!成年後見人の選任と具体的な業務について

不動産トピックス

前回の記事では、認知症の方の不動産売却に役立つ「成年後見制度」の概略について、解説いたしました。

実務的には「成年後見人」が認知症の方の財産管理に関与することになりますので、今回の記事では「成年後見人」の選任と具体的な業務についてQ&A形式で詳しく見ていきたいと思います。

成年後見制度を利用したいときは、どこに相談すればいいですか?

法定後見制度の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行う必要がありますので、主な相談先は家庭裁判所となります。

その他にも、市区町村の高齢者福祉課等、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどでも相談に応じてくれます。

成年後見等開始の申立てから、実際に成年後見人等が決まるまでにどのくらいの期間がかかりますか?

状況によって申立てに必要な書類等も変わってくることから、一概には言えませんが、必要書類がすべて整った一般的なケースで、家庭裁判所による調査等に困難がない場合は申立てから1~2か月程度で後見等開始の審判が出ます。審判書謄本を成年後見人等が受領してから2週間経過後に、審判が確定することになります。

ただし、本人に対する鑑定を行う場合は、鑑定に要する期間分だけさらに延びることになりますので、できる限り早めに手続きを進めることが望まれます。

本人の親族が、成年後見人等になることはできるのですか?

成年後見人等の選任については、家庭裁判所の裁量によって行われます。そのため本人の親族を成年後見人等の候補者として申立てを行ったとしても、必ず選任されるとは限りません。

親族間に争いがある場合や、本人と利益相反する関係にある場合など、事案によっては弁護士や司法書士など(いわゆる専門職後見人)の第三者が選任されることもあります。

特に下記のような事例では、第三者が選任されることが多くなっています。

  • 親族間に意見の対立がある場合
  • 流動資産の額や種類が多い場合
  • 後見人等候補者が自己もしくは自己の親族のために本人の財産を利用(担保提供を含む。)し,または利用する予定がある場合
  • 後見人等候補者が,本人の財産の運用(投資)を目的として申し立てている場合

2000万円を超える多額な預貯金や株式、手形を複数持っている場合は、「財産の管理が難しい」「財産の使い込みを防ぐため」といった理由で第三者が法定後見人に選ばれやすくなります。

成年後見人の行う業務にはどのようなものがありますか?

成年後見人の主な業務は「財産管理」と「身上監護」の2つに分かれています。「財産管理」には、「預貯金の収支管理」「不動産の管理」「株式・有価証券等の管理」「税務処理」「生命保険の管理」「自動車の管理」などが含まれます。一方、「身上監護」には、「医療関係の手続き」「施設入所の手続き」「介護等の手続き」などが該当します。

また、成年後見開始等の審判が確定した後は、1か月以内に財産目録・収支目録を作成して、就任報告書とともに家庭裁判所に提出する必要があります。さらに、おおむね半年から1年に1回、家庭裁判所の指示に従って、定期的な報告をしなければなりません。

定期報告にあたっては、金銭出納帳や通帳の記帳、請求書や領収書などの保管が必要となります。身上監護については、本人の治療や介護、生活状況について報告が求められるため後見人日誌が必要だと考えられます。

成年後見人に関するトラブルには、どのようなものがありますか?

内閣府の調査によると、平成27年の成年後見人による不正件数は521件、被害額は約29億7,000万円にものぼります。

トラブルの90%以上は親族が後見人であるケースで発生しており、成年後見人としての業務・責任について十分に理解しないまま、預貯金の管理を行っていることが要因だと考えられています。

他にも「法定後見人になった弁護士の預貯金管理が厳密過ぎて、他の家族の日常生活が苦しくなった」「不動産の管理をきちんと行っていないので、建物が荒れ果てている」「経費の使い方が怪しい」など、法定後見人の業務の進め方に関するトラブルも目に付く状況になっています。

成年後見人を解任することはできるのでしょうか?

成年後見人の解任には、「不正な行為」「著しい不行跡」「その他後見の任務に適しない事由」のいずれかが必要となります。解任事由に該当する場合、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、家庭裁判所は成年後見人を解任することができます。

具体的には、成年後見人等による使い込み、成年後見人等としての権限濫用、家庭裁判所へ報告義務を果たさなかった場合などが挙げられ、また、成年後見人等が高齢・疾病等の理由で職務を遂行できない場合も該当します。

一方、成年後見人との関係悪化などの理由では解任することはできません。解任できるのは解任事由に該当する場合のみということに留意しましょう。

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