成年後見制度を活用した不動産売却4つのポイント

不動産トピックス

認知症になってしまった親族の不動産を売却するときは、どのような手続きが必要となるのでしょうか?

高齢化が進む日本では、認知症の方々の財産管理をめぐるトラブルが大きな社会問題となってきており、近年になって「成年後見制度」が注目されるようになってきました。

今回は、「成年後見制度」を活用した不動産売却について、ポイントや注意点を解説したいと思います。

単独では契約行為ができないこともある「認知症」

厚生労働省のホームページによると、「認知症」とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」をいうと記されています。

日常生活・社会生活が営めない状態ということですから、認知症が進行してしまうと、契約などの法律行為を行うための「意思能力」に問題があるとみなされます。意思能力が認められない場合は、契約を締結しても無効ということになってしまうため、単独で不動産の売買契約を結ぶことも難しくなります。

ただ、「認知症」にも進行の程度がありますので、判断能力については個別の事情によることになりますが、一般的には、小学校低学年以下の小さな子どもくらいの判断能力であれば、「意思能力」がないとされるようです。

「成年後見制度」について

「成年後見制度」と「成年後見人」とは

たとえ実の子であったとしても、親の財産を勝手に処分することはできません。認知症が進行してしまった親の不動産を売却する際には、「成年後見制度」を活用することになります。

裁判所ホームページの記載によると、「成年後見制度とは、認知症,知的障害,精神障害などによって,判断する能力が欠けているのが通常の状態の方について,申立てによって,家庭裁判所が「後見開始の審判」をして,本人を援助する人として成年後見人を選任する制度です。」となっています。

成年後見人は,後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり,本人の契約を取り消したりするなど、幅広い権限を持つため,本人の財産全体をきちんと管理して,本人が日常生活に困らないように十分に配慮する義務があるとされます。

「成年後見制度」の援助者について

「成年後見制度」では、本人の判断能力の程度により、3種類の援助者を規定しています。以下で詳しく見てみましょう。

補助人

補助人は、「判断能力が不十分な方」の場合に選任される援助者です。補助人は、民法が定める一定の重要な法律行為の中から、必要に応じて個別に同意権や取消権などを認めてもらう必要があります。

不動産売却についての同意権、取消権についても、補助人申し立ての際に付与するよう求めることになります。また補助人が申し立てをするときには、本人の同意が必要です。

保佐人

保佐人は、「判断能力が著しく不十分な方」の場合に選任される援助者です。

民法の定める一定の重要な法律行為についての同意権、取消権、追認権が認められており、不動産の売却も、保佐人の同意が必要となります。

認知症であっても、一定の判断能力がある場合には保佐人が選任されます。

成年後見人

成年後見人は、「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」の場合に選任される援助者で、上記で説明した「全面的な権限を持つ後見人」です。

日常生活を除く、あらゆる法律行為について本人の代理権、取消権や追認権を持ちます。一般的には、本人の判断能力がほとんどあるいは完全に失われているときに選任されます。

認知症の親族のために後見人申立てをする場合は、「成年後見人」の選任を求めることになりますが、家庭裁判所において一定の判断能力があると見なされると、保佐人や補助人が選任される可能性もあります。

「成年後見開始審判申立て」について

成年後見制度により、適切な援助者を選任してもらう際は、管轄の家庭裁判所に「成年後見開始審判申立て」を行うことになります。

管轄の家庭裁判所

成年後見開始審判申立の管轄の家庭裁判所は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。必ずしも住民票上の住所である必要はなく、「実際に本人が居住している場所」を管轄する家庭裁判所となります。

申立権者

「成年後見開始審判申立て」を行うことができるのは、以下の人です。

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等内の親族
  • 市町村長
  • 検察官
  • 成年後見人等
  • 成年後見監督人等

※4親等内の親族は、親や子、孫や祖父母、叔父、叔母、甥、姪、いとこ、配偶者の父母や祖父母、配偶者の兄弟姉妹などが該当します。

本人に親族が全くいない状況で老人施設等に入所している場合は、市町村長が申し立てをするケースも増えてきています。

成年後見人による不動産売却の注意点

成年後見人による不動産売却を行う際には、重要な注意点があります。それは、「

居住用不動産の売却には別途の許可が必要」という点です。

成年後見人が選任されても、居住用不動産の売却については、成年後見人の独断では行うことができません。本人にとって重要な資産である自宅の売却には、別途家庭裁判所の許可が必要とされているのです。成年後見人は全面的な代理権を持っていますが、家庭裁判所の許可を得ずに居住用不動産を売った場合、売買契約は無効となります。

家庭裁判所で居住用不動産の売却許可を得るには、以下のような理由が必要となります。

  • 介護施設の入所費用、月額費用のため
  • 本人の生活費のため
  • 介護施設に入居済みで家に戻る予定がないため

居住用不動産処分許可の申立ては、成年後見の審判のあった家庭裁判所で行います。申立後、提出資料を基に審理し、家庭裁判所が家の売却を許可してはじめて売却が可能となります。

本人の投資用マンションなどの、非居住用不動産(収益物件)の場合には家庭裁判所の許可は不要です。成年後見人の判断で売買契約を締結して売却を完了することができます。

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