不動産の価値は、立地・面積・交通・地盤・日当たり・周辺環境など、その不動産が持つ様々な個別要因によって決定付けられるとともに、市場環境や経済動向からも大きな影響を受けることになるため、正確な価格を算出することは簡単ではありません。
そのため、不動産を売却する際には、不動産取引のプロである不動産仲介会社に査定してもらい、売り出し価格の参考指標とすることが一般的です。
今回は、この「不動産査定」の種類とその特徴について詳しく見ていきましょう。
「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(本査定)」の違い
不動産査定の方法には、大きく分けて「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(本査定)」の2つがあり、それぞれ特徴が異なっています。
「机上査定(簡易査定)」は、物件の広さや築年数、立地などの不動産個別のデータと過去の取引事例・路線価などの資料だけで価格を算出するものです。
一方、「訪問査定(本査定)」は、実際に物件を訪問し、内装・設備などの現状も踏まえて価格を算出するものです。
「机上査定(簡易査定)」のメリット・デメリット
「机上査定(簡易査定)」の最大のメリットは、わざわざ不動産会社と面談する時間をとることなく、ある程度正確な物件価格を知ることができる点にあります。
通常であれば数日、迅速な対応ができる会社であれば、数時間で査定価格を提示してくれるため、急いでいる方には最適な方法です。
ただし、「机上査定(簡易査定)」では、現地調査してみないと分からない個別要因を査定価格に反映することができないため、物件によっては適正な水準からずれてくる場合があります。
「机上査定(簡易査定)」による査定価格は、あくまでも参考値であり、売り出し価格を決定する際の指標としては適当ではありません。
売却しようかどうか迷っており、とりあえず相場価格を知りたいという段階で使うのが妥当だと考えます。
「訪問査定(本査定)」のメリット・デメリット
「訪問査定(本査定)」では、現地を見ないと判断できない価格形成要因を査定価格に反映させることができるため、より適正な水準の査定価格を算出することができます。
不動産売却時の“売り出し価格”を決定する指標として利用できるという点が、「訪問査定(本査定)」のメリットということができます。
不動産売却の現場では、売り出し価格が高過ぎると買い手が現れず早期売却が難しくなります。逆に低過ぎると損をすることになりますので、値付けは慎重に行う必要があります。
「訪問査定(本査定)」は無料になっていますので、売却をスタートする前に必ず行うようにしましょう。
ただし、「訪問査定(本査定)」では査定価格が提示されるまで、数日から1週間程度かかる場合がありますので、時間に余裕がある段階で不動産会社に依頼することをお薦めします。
「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(本査定)」の価格差
最近では、Googleのストリートビューを見ることで、ある程度の現地情報を把握することができますが、情報量としては十分ではありません。
現地調査を行うことによって判明する価格形成要因には、主に下記のようなものがあり、これは物件を買う際にも、きちんと調べるべきポイントになります。
- 物件の周辺環境
- 騒音・振動(季節・時間帯によっても異なるので要注意)
- 臭気(季節・時間帯によっても異なるので要注意)
- 日照、通風(将来悪化する可能性も考慮)
- 眺望(将来悪化する可能性も考慮)
- 管理の状態
- 建物の損傷
- 土地の高低差および傾斜
- 嫌悪施設の有無
- 不法占拠者の有無
物件だけでなく、最寄り駅までのルートについても調べることが重要です。
薄暗く、雰囲気の悪い道を通らなければならない場合は減価要因となりますが、これも現地調査をしなければ分からないポイントです。
上記のような点に問題があれば、「訪問査定(本査定)」と「机上査定(簡易査定)」の査定価格に大きな差が発生することがありますので、注意が必要です。
逆に、下記のような物件では、価格差があまり出ないと考えられますので、時間が無い場合は「机上査定(簡易査定)」で対応可能な物件もあります。
- 取引事例の多い中古マンション
- 住宅街にある整形な更地
中古マンションの場合、直近の取引事例単価から、対象物件の面積や階数、バルコニーの向き等をベースに、市場動向を勘案して査定価格を算出することになりますので、取引事例が多ければ、訪問査定と金額が大きく変わることはありません。
室内の損傷が極めて大きい場合は、査定価格に影響を与えることはありますが、事前のヒアリングである程度織り込むことができます。
また、住宅街にある整形な更地も、住宅街ごとに相場が形成されていることもあり、1区画当たりの面積によって、総額が決まることになります。
それ以外の、築浅マンション、一戸建て住宅などは、それぞれの物件が持つ個別要因が査定価格に大きな影響を与えるため、「訪問査定(本査定)」が必須となります。
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